告地区
熊本県芦北町の告地区。くねくねとした林道をぬけると集落がみえてきます。9軒ほどの集落の周りには点々と茶畑があり、古くからこの地区の人たちが飲むお茶「告茶」として親しまれてきました。お茶作りをする人も年々少なくなるなかで、ここでつくられる「告茶」を作り続けたいという思いがあります。
ここには、自生の山の茶があり、昔からその山茶は、直火の釜で作る「釜炒り茶(緑茶)」が作られてきました。
カジハラ茶園では、その茶葉で紅茶を作ります。品種や季節ごとに、香りや味わいが違い、それぞれに個性のある紅茶となります。
香りのお茶といわれる「香駿」は釜炒り茶にも紅茶にも。茶葉は「秋摘み香駿紅茶」
告地区の他に、山奥や車で30分以上離れた場所にも茶園があります。近年は、放棄された茶園を預かり、茶園を再生させることもあるそうです。
それらのほとんどが山の急な斜面。傾斜がきつく、機械を入れることができないため、背負式リュックで有機肥料を振り、可搬式の摘採機でお茶を摘まれます。手間のかかる作業にくわえて、農薬は使わない、環境に負荷をかけない栽培をされています。
大野地区 山の中腹の茶畑
お茶作りは、中国や台湾に行き、お茶作りの真髄を学んだところはじまりました。
「茶葉の芯水をいかに抜くか」これが茶作りには最も重要なこと。
風を送りながら水分を抜いていく「萎凋(いちょう)」の見極めが紅茶の出来を左右するため、紅茶作りの時期は、睡眠時間も削ってでも、その時の気温や湿度に応じて丁寧に作業していくのだそうです。
萎凋(いちょう)
発酵中の紅茶
2022年、ロンドンで行われたお茶のコンテスト
THE LEAFES INTERNATIONAL TEA ACADEMY AWARD S2022 (THE UK TEA ACADEMY 主催)にて「夏摘みべにふうき」が紅茶部門で金賞、さらに全ジャンルのなかで最優秀賞であるBEST IN SHOWを受賞。世界一の紅茶という栄誉に輝きました。
ロンドンでは、
「これまで飲んだことのない味と香りで、非のつけようがない。」という感嘆の声をいただいたそうです。
山の中で手間を惜しまず作る紅茶。
そこでしか作れない紅茶は、人々に感動を与えてくれます。
2024年9月
取材・写真 安本多美子